漢詩俳句同好会 第13回諸橋轍次博士漢詩記念大会にて2名入賞

11月7日(日)、新潟県三条市にある諸橋轍次記念館にて第13回諸橋轍次博士記念漢詩大会表彰式が開催され、学生の部において2年A組檜司郎が優秀賞、犬竹真咲が奨励賞を受賞しました。修学旅行期間中のため、両名の参列はかないませんでした。入賞作品及び応募作品は以下の通りです。

 【優秀賞】2年A組 檜 司郎

 臥草堂                          草堂に臥す
溽暑淋漓臥草堂    溽暑淋漓 草堂に臥す
雲峰碧樹仰蒼穹    雲峰碧樹 蒼穹を仰ぐ
閑人一刻忘塵事    閑人一刻  塵事を忘れ
返照涼生半睡中    返照に涼生じ 半睡の中

【大意】

暑中汗をかいて 草原に寝転び
入道雲や緑樹 青空を仰ぎみる
閑人は束の間 わずらわしい俗事を忘れ
夕日で涼しさが生じ 夢中にまどろんでいる

【奨励賞】 2年A組 犬竹 真咲

 懐鄕         懐郷
三更月下夢醒時    三更の月下 夢醒むるの時
枕上開窗千里馳    枕上窓を開けば 千里馳す
麗雅佳人何日會    麗雅佳人 何れの日にか会はん
多年難忘憶風姿    多年忘れ難く 風姿を憶ふ

【大意】 
深夜月の下 夢から覚めた時
枕の傍窓を開くと 遠く想いを馳せる
麗しく優雅である佳人 いつの日に会えるだろうか
長い間忘れられない その姿を思い偲ぶ

【応募作品】2年A組 横尾 裕介

 宿雨         宿雨
宿雨幽篁遊子心    宿雨の幽篁 遊子の心
破窓苔点緑陰深    破窓の苔点 緑陰深し
蛙群閣閣無詩客    蛙群閣閣 詩客無く
孤月簫簫散素襟    孤月簫簫 素襟に散ず

【大意】

梅雨時期の竹藪の中で旅人の心あり
破れた窓や苔むした岩に 緑陰が深まる
蛙が群れてケロケロと鳴き 詩人の姿はなく
月が物寂しく 心中の憂さを晴らしている

【応募作品】1年B組  依田 悠杜

 寂寥         寂寥 
天雲陰翳午寒侵    天雲陰翳りて 午寒侵す
路木鳩聲一曲琴    路木の鳩声 一曲の琴
草藪群蛙叢竹綠    草藪の群蛙 叢竹緑なり 
幽居騷客寂寥心    幽居の騒客 寂寥の心

【大意】

雲は陰って 昼は徐々に寒くなる
街樹の鳩の鳴き声は 一曲の琴の響きがある
草藪のたくさんの蛙 叢竹は緑になり
わび住まいの詩人に 寂寥の心あり

【顧問応募作品】 通 文享

 訪筑豐炭田      筑豊炭田を訪ぬ 
昔聞三伏祭文聲          昔聞く三伏祭文の声
今見筑豐虛炭坑          今見る筑豊の虚しき炭坑
墨客作翁傳景象    墨客の作翁景象を伝へ
煙樓殷賑槿花榮    煙楼の殷賑も槿花の栄

【大意】

かつて聞いた夏祭りの盆踊りの「炭坑節」
今目にする筑豊のさびれた炭坑の跡
絵師山本作兵衛翁が炭鉱生活の様子を
今に詳細に伝えており
煙突の賑わいも槿花一日の栄であった(今は滅び去っているのだ)

【注】

※「三伏」‥‥夏至以降の庚の日。猛暑の時期。
※「祭文」‥‥死者を祭る際の願文。ここでは盆踊り唄「炭鉱節」を指す。「月が出た出た〜月が出たヨイヨイ」のフレーズで有名。
※「作翁」‥‥福岡出身の炭鉱記録画家山本作兵衛のこと。日本で初めてユネスコ記憶遺産に登録された炭鉱画家であることが知られている。
 ※「煙楼」‥‥煙突のこと。「煙楼殷賑」とはかつて炭鉱が栄えていた状況を指す。前述「炭坑節」に「あんまり煙突が高いので〜さぞやお月さん煙たかろう、サノヨイヨイ」とある。
※「槿花栄」‥‥「槿花一日の栄」とも言い、この世の栄華もはかなくむなしいもののたとえ。  (今年7月に修学旅行実踏に際して詠んだ詩)

(韻)下平声八庚